- 規制すべき
- 規制は現実的ではない
アメリカのジョー・バイデン大統領は2022年5月24日、テキサス州の小学校で起きた銃乱射事件について国民に向けて演説し、銃規制を再び強化するように呼びかけた。
「子どもを失うということは、自分の魂の一部を引き剥がされるようなものだ。胸の奥に空洞があり、そこに吸い込まれるような感じがする」とバイデン氏は述べた。
「そして、決して以前と同じには戻れない」
バイデン大統領は、最初の妻ネリアとの娘ナオミを1972年に交通事故で亡くし、息子のボーは2015年に脳腫瘍で亡くしており、その喪失が家族にどのような影響を与えたかを率直に話している。
ジル・バイデンが隣で見守る中、彼は疲れた様子で、テキサス州ユバルデのロブ小学校の親たちは「自分の子どもがベッドに飛び込んできて、抱きしめることはもうないのだろう」と言った。
少なくとも19人の児童と2人の大人が死亡した大量虐殺は、あと2日で休みに入るという日に起こった。
「一体、いつになったら銃規制に反対するロビー団体に立ち向かうのか」 とバイデンは視聴者に問いかけた。バイデンは10年前、副大統領として、2012年にコネチカット州のサンディフック小学校で起きた銃乱射事件の後にも、若い命が失われたことを嘆き、視聴者に同じことを問いかけている。
「リストは延々と続き、さらに増えていく」とバイデンは言った。
「このような大量殺戮は、世界の他の場所ではめったに起こらない。なぜ我々はこのような殺戮を喜んで受け入れるのだろうか。なぜこのような事態を放置し続けるのだろうか。一体どこに、これに対処する勇気を持つ我々の気骨があるのだろうか」
バイデンはさらに、「銃規制に反対するロビー団体は20年間、攻撃用兵器のマーケティングを積極的に行ってきた」と述べ、銃器の規制を再び強化するよう呼びかけた。
「18歳の子どもが店に入ってアサルトライフルを2丁買ってもいいという考えは間違っている」
結論から言うと「物理的に不可能」だからです。
アメリカには約393,000,000丁の銃があるとされています。
わかりやすく書くと約三億九千三百万丁の銃です。
因みにアメリカの人口は約三億三千万人ですから、銃の数の方が国民の人口よりも多いんですね。(これは日本の人口の3倍以上の数です)
…で、これらの銃ですが、狩猟用のライフルやショットガン、護身用のピストル、そして、戦争でも使えそうなアサルトライフルなど、大小さまざまな物があるんです。そして、「これら全ての銃が登録された物”というわけではない”」という事が問題をややこしくしています。
つまり、知られているのだけでも約4億丁の銃がアメリカ国内にはありますが、実際には登録されていない物も多くあり、そういう物まで含めると「実際にいくらあるかさえ解らない」という事になると思います。
アメリカ合衆国憲法修正第二条では「人民の武装権」について明記されており、その内容は「規律ある民兵は、自由な国家の安全にとって必要であるから、人民が武器を保有し、また携帯する権利は、これを侵してはならない。」とされています。つまり、これによって個人的に銃の所持する権利を法律的に認めているので、まずはこの法律を廃止(もしくは修正)するという事が必要になります。
ただ、この様な(全米に数億丁の銃が出回っている)状態で、「は~い、法律を変更して銃が持てなくなりました~!」と言って銃を回収しようとしても、登録されていなかった銃まで全て回収できるわけありません。特に銃を使って悪い事をしようと考えている人が銃を手放すわけがありません。結果、「銃を持たない」という選択をした正直者が「損をする」という理不尽な事が起こる可能性があります。
その結果、「銃を所持している悪い奴」に対応するには、逆に「自分も護身用の銃を所持するしかない」という事になってしまうのですね。おかげで情勢が不安になると銃の売り上げが伸びると言う事になります。
因みに、コロナ禍が始まった当初、全米が政情不安になるのが見込まれたので、銃の売り上げが一斉に増加しました。
下のグラフはコロナパンデミックでの銃販売の増加を表した物ですが、2020年の2月にコロナがアメリカに上陸すると銃の販売量が一気に増加します。その後、ジョージフロイドさん殺害事件を受けて全米で黒人による抗議活動が激しくなると、更に銃の販売量が増加します。そして、2021年1月の大統領選による連邦議会襲撃事件を受けて、更に銃の販売量が増えました。
これらの新規の銃購買者は、女性や有色人種といった人達が多く、ほとんどの人が護身用の銃を買い求めていました。
(コロナパンデミックにより銃を買いに並ぶ人達の列)
この様に、「自分の身は、最終的に自分で守るしかない」という事になっているのが現状です。
国や州は銃の規制をしなければならないと考えているふしはあるものの、実際にどうしたら良いのかという具体策が出せない状態で、現在では「購入から入手までに一定期間を設ける」だとか「購入者の犯罪歴を調べる」などという策が講じられている物の、これだけでは不十分な事は明白です。
この結果、銃による犠牲者は年々増加しており、過去10年ぐらいは公共の場での銃による大量殺人事件が頻繁に起こっています。
2017年10月1日には、私の地元ラスベガスで「61人が死亡、867人が負傷」するという前代未聞の銃の乱射事件がありました。事件当時、私は現場から4㎞ほど離れた所で丁度仕事を終えたばかりでした。帰宅するとネット上が事件の事で大騒ぎになっており、翌日は知り合い同士の「生存確認」で大変な事になりました。
私はアメリカに30年ぐらい住んでいますが、銃は所持していませんし、購入する予定もありません。だからと言って、銃を所持している人を非難する気にはなりません。それは単純に「自分や家族の身をどうやって護るか」という考え方の違いだからです。
悲しい事ですが、これがアメリカの現実であり、大きな社会問題でもあるのです。
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