- 角餅
- 丸餅
東の「角餅」
お雑煮と言えばお正月には欠かせない日本人の伝統料理の1つです。おせち料理と並びお正月ソウルフードと言っていいでしょう。今回は「日本列島のセンターライン」静岡県で生まれ育った筆者がお雑煮に入れるのは角餅?丸餅?というテーマでお話しさせていただきたいと思います。この項では「角餅」を取り上げ、お雑煮の歴史を紐解きながら、なぜ東日本では角餅を食べるようになったのかについて掘り下げていきたいと思います。
1、江戸っ子気質が生んだ角餅
西日本の料理が京都から広がった通り、東日本の料理は東京から地方に広がっていったと言われています。東日本のお餅が角餅になった理由には諸説あるようですが、江戸城がある江戸で「他をおさえて勢力を拡大する。」「敵をのす。」という意味でのし餅が広がったという説が1つあります。また、お餅を丸い状態で保存するほどそれぞれの家が広くなかったために、収納がしやすい四角い餅になったとう説、またせっかちな江戸っ子が人口の多い江戸で、手早く大量に作れるようにとのし餅を作り一気に切って角餅にしたともいわれています。
2、お雑煮マップで見る「角餅」分布。
下記、お雑煮マップをご覧ください。マップを見てみると分かる通り中部、東海地方を境に東日本のほぼ全ての県でお雑煮には「角餅」が用いられているようです。また面白いことにこの境目はちょうど天下分け目の戦いが起きた「関ヶ原」がある場所なのです。これだけでも歴史好きな私は歴史ロマンを感じてしまいます。ちなみに東日本の中でもそれぞれのエリアにそれぞれの歴史があるため、例外もあります。山形県庄内地方や岩手県の関市では大阪と北海道を結んだ北前船の影響で西日本の文化が多く流入しお雑煮に丸餅が用いられ、また東京の下町エリアでは角餅をお雑煮に使用するものの「焼く」でも「煮る」でもなく「揚げる」という方法で食されているようです。
https://chefgohan.gnavi.co.jp/season/ozoni/
3、東西の分岐点の静岡県ではどちらが使われているのか?
東日本では主に角餅、西日本では丸餅が食されているということはお分かりいただけたと思いますが、では私が生まれ育った東西の分岐点である静岡県ではどちらが食されているのかについてお話させていただきます。私が生まれ育ったのは静岡県の中でも東日本よりにある三島市という町です。私は両親ともに先祖代々静岡県民なのである意味サラブレッド静岡県民と言えます。では、私の実家ではどちらのお餅が使われているのか!ズバリ、答えは「角餅」です。地元の友人に聞いた話ですが静岡県は東西に長く広いので浜松や磐田などでは西日本の影響が強く家によっては丸餅が使われているようです。
4、お雑煮の味付けは?
ここまではお餅の形についてお話いたしましたが、それではお雑煮の味はどうでしょうか?お餅の形に関しては「東日本は角餅」で「西日本は丸餅」と比較的はっきりと分かれたのに対し、味に関しては同じようにはっきりとは分かれないようです。ただ角餅を食す東日本のほとんどは醤油ベースのすまし汁でお雑煮を作るようです。東日本でも東に行けば行くほど味が濃くなり、西に行けば行くほど薄味になるようですね。
まとめ
以上、主に東日本で食べられている角餅についてお話させていただきました。今回お雑煮について色々と調べて初めて知ったのですが沖縄ではお雑煮を食べる習慣がもともとなく、お正月にはお雑煮の代わりに沖縄の伝統料理のお雑炊「イナムドゥチ」を食べるそうです。たまには趣向を変えてお正月にお雑炊もいいかもしれませんね!
西の「丸餅」
お雑煮の発祥の地は京都であると言われています。歴史はとても古く平安時代にはすでに食べられており、時代の移り変わりによりお雑煮もその地域や文化に順応し変化して行ったようです。ただお餅の形に関しては西日本では昔から変わることがなく、丸餅が食べられ続けているようです。今回は、「丸餅」に焦点を当ててなぜ西日本のお餅は丸いのかやお餅を食べることの意味など深く掘り下げていきたいと思います。
1、丸餅は神聖なもの
神棚にお餅をお供えするように、もとも丸餅は神道の神事で神様の力を凝縮した象徴的な存在だったそうです。そのため、神様にお供えし新年に初めて食べる縁起の良い食べ物とされていました。丸い形に宗教的な意味があったため、縁起の良い丸いお餅を四角く切るのはご法度。そのため、京都の文化の影響を強く受けた西日本では今も丸餅がお雑煮に使われているのです。江戸は「将軍のお膝元」であるため「敵をのす」という意味で角餅が広がったのに対し、神道のトップである「朝廷のお膝元」では今でも丸餅が使われ続けているようです。
2、鏡餅からの丸餅
お正月に行われる鏡開きとは神聖な鏡餅から新しい命を受け取る神聖な行事の1つです。新年に神様が全てのものに生命を与えるために現れると言われており、神様の霊力がお供えした鏡餅に宿っていると考えられてきました。そのため「神様のパワーが宿った鏡餅を食べることで新しい生命をいただく。」という意味から鏡開きをする時に刃物を使わず叩いて割るという風習があるのです。
3、丸餅が主流の西日本でも角餅?
角餅の項では東日本でも丸餅を使う地域があると説明しましたが実は西日本でも一部のエリアでは角餅が使われています。これも歴史が背景にあるのですが土佐藩があった高知県と薩摩藩があった鹿児島県は、藩主の山内氏、島津氏が江戸に滞在していた期間が長かったために丸餅ではなく角餅を使う風習広がり今でも角餅が使われている家が多いそうです。
4、お正月くらい贅沢させてくれ。
最後に丸餅に関するこぼれ話です。西日本、香川県の讃岐地方の雑煮では丸餅に餡餅を入れて食べる風習があります。これは甘いものが贅沢品であった江戸時代に「年に一度くらい甘いものが食べたい!」ということでお雑煮のお餅の中に餡餅を隠し入れて食べたのが始まりと言われています。また熊本でも同じように雑煮に餡餅を入れて食べる文化が残っています。
まとめ
以上、主に西日本でお雑煮に使われる「丸餅」についてお話させていただきました。江戸の庶民の生活の中から「角餅」が生まれたのとはまた違い「丸餅」は宗教的な側面が大きいお餅であることがわかりました。どちらもお餅であることは同じですが、この記事を読まれた皆さんは新年はぜひ歴史ロマンを感じながらお雑煮を食べて見てください。
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